080403 淡墨桜行(3)

まずは歩く。そう決めた。
もう日は暮れた。時間はない。



しかし、
駅にあった観光客向けの地図を見ても全くぴんとこない。
どこなんだここは。
曲がりくねって絡み合う道は前を見通すことを許さない。
どっちに行けば。
とにかく道ばたにあった案内標識を頼りに進んでみる。
不安が募る。


根尾川の清流を渡り…』
初めて淡墨桜のことを耳にしたときの一節。
その川を私も渡る。


ふと見やると川岸に人影。


冷えるのに何を…と思いきや、どうやらカカシのようだった。
マネキンか何かだろうか。よく見ると、あっちにもこっちにも…。
皆一様に川面を見つめている。
清流を守る努力の一端なのだろうか。
薄暗い橋の上から、
その姿は不気味に感じられた。
写真を撮ることすら憚られた。


よく整備された道を上る。
案内標識は見かけなくなった。
ただ上る。きっとこっち。
緩やかな階段を上る。きっとこっち。


目の前が開けて、
突然その桜があった。






淡墨桜は、蕾のときは薄いピンク、満開に至っては白色、散りぎわには特異の淡い墨色になり、淡墨桜の名は、この散りぎわの花びらの色にちなむ。--- Wikipediaより


三分咲きといった具合だろうか。しかし満開ともなればさぞやと思しき壮大さである。
そして可憐に色づいたつぼみの姿もまた美しい。
想像していたよりも濃い色だったのだが、これは毎年なのだろうか。
寒い冬を越すと桜の色づきが良くなると聞いたが、そういうことなのだろうか。


また別の意味で目を引く、地面から突き出た添え木の数々。
これはまるで磔刑か何かのようだ…。
だがこう支えなければ自らの重みでくずおれてしまうのだろう。
縛り付けられた幹。
樹勢回復措置の跡。
樹齢1500年の老木。
介添え無しでは立つこともままならない老体。


今年もまた花をつける。